レース後に「この形を選んだのは彼女。ハラハラさせる競馬を、彼女がしたがった」と振り返ったのは川田将雅騎手。言葉通りに受け取るなら、なんとも自由奔放な女王がいたものである。

スリリングな走りで桜花賞（GⅠ）を制したのは、昨年の2歳女王リバティアイランドだ。

チューリップ賞を逃げ切ったモズメイメイが隊列を引っ張り、同2着のコナコースト、3着のペリファーニア、報知杯フィリーズレビューを勝ったシングザットソングらも早めに位置を取る。その後ろにはシンザン記念差し切りのライトクオンタム、クイーンC1着のハーパーや2着のドゥアイズなどが続き、阪神ジュベナイルフィリーズ2着のシンリョクカ、アルテミスS勝ち馬ラヴェル、札幌2歳S覇者ドゥーラらは後方に構えた。

そしてリバティアイランド。単勝オッズ1.6倍の断然人気を背負いながら「進んでいく気を見せなかった」せいで、3コーナーに差し掛かるところでも後ろから3頭目というポジションだ。が、上がり3ハロンタイム（推定）31秒4の豪脚を披露した新馬戦、進路確保に苦労しながら2着に差してきたアルテミスS、速い流れから力強く突き抜けた阪神ジュベナイルフィリーズと、必ず伸びてくるのがこの馬の魅力。川田騎手は「動いてくれることを信じるのみ」と、リバティアイランドを4コーナーで馬群の外へと導く。

直線の攻防。粘るモズメイメイを交わしたコナコーストとペリファーニアが懸命の追い比べを演じる。そこへ大外から迫ったのがリバティアイランドだ。残り200メートルの地点では先頭までまだ4馬身から5馬身の差があったものの、末脚の勢いは止まらず、一気に前を飲み込む。最後は、ペリファーニアを振り切ったコナコーストをきっちりと交わし、4分の3馬身抜け出してのゴール。異次元のスパートで桜の冠を戴いたのだった。

「新しい形で勝ち切れたのは、いい経験」と川田騎手。次はどんな走りでわれわれを魅了するのか。気ままな女王の行く末を見守りたい。

（谷川　善久）