菊花賞（GⅠ）には、皐月賞1着&日本ダービー2着のソールオリエンスと、皐月賞2着&日本ダービー1着のタスティエーラが顔をそろえた。神戸新聞杯を差し切ったサトノグランツ、日本ダービー3着のハーツコンチェルト、皐月賞3着のファントムシーフらも逆転を狙って牙を研いでいる。

だがメンバー中で唯一の“重賞未経験馬”が、これらを破ることになる。昨秋の未勝利戦から前走・3勝クラスの日本海Sまで4連勝をマーク。鞍上のクリストフ・ルメール騎手が「レースごとに強くなってきた」と語るドゥレッツァである。

大外17番枠から一気にハナを奪うドゥレッツァ。ルメール騎手いわく「静かな騎乗をしたかったけれど、返し馬から走りたがっていた。馬が自分で判断した」という先行策で、好位につけたハーツコンチェルトやファントムシーフ、中団から後方に構えたタスティエーラ、サトノグランツ、ソールオリエンスらを率いてペースを作る。

3コーナー手前ではプリンシパルS勝ち馬パクスオトマニカと京都新聞杯3着のリビアングラスにポジションを譲り、さらには神戸新聞杯2着のサヴォーナ、札幌記念2着のトップナイフが押し上げてきて内に閉じ込められる形となったドゥレッツァだが「自分のペースで走っていたので全然平気」とルメール騎手は意に介さない。

そして直線。加速態勢に移ったドゥレッツァは、粘るリビアングラスを交わしてふたたび先頭に立つと、後続を突き放していく。そのままゴールまでトップスピードを維持し、さすがの底力で追い上げてきたタスティエーラに3馬身半差をつけ、ソールオリエンスも3着に完封。破竹の5連勝で最後の一冠を手にしたのである。

「上の世代に強い馬はいるが、2400メートル以上ならトップレベル、まだまだいい結果を残すことはできる」とドゥレッツァを称えるルメール騎手。もちろん、ここでは敗れたタスティエーラやソールオリエンスも黙ってはいないだろう。新たなヒーローの誕生によって、長距離戦線はさらに熱いものとなるはずだ。

（谷川　善久）